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  3. 第14回「人間は生まれたときは100%自然なのに、意識が身体を不自然にしてしまっているんです。それをほぐしていかなければいけません。」

第14回
それが一瞬に起こっているんですか?手を握った瞬間ですよね、お弟子さんがブルブルと震えだしたのは。
一瞬です。あの人達のレベルになると、一瞬にしてあそこまで行ってしまう。普通だったら何分、何十分もかかりますよ。稽古をやっていない人ですと、ああいう状態にまで達するには幾日もかかります。あの人たちはベテランで、ものすごく稽古を積んでいる人たちですから前技はいらないわけです。いきなり私の身体や意志の動きを感じ取ってしまうわけです。湯たんぽのようなものでゆっくり手を温めていくわけではなく、いきなりバーナーのような強烈な火をおこすわけですから、一瞬で手が焼焦げてしまうような技なんですよ。
あの一瞬で恍惚となったお弟子さんたちは稽古が終わったあと、すぐに次の行動に移れるんですか? 電車に普通に乗って帰って、いつもの日常や会社勤めができるものなんですか?
それは大事なことですね。恍惚状態になっているように見えるけれど、実はとてもクールなんです。ですから、深い瞑想状態で動いているのに、たちどころに現実に戻ることが出来ます。
自制心が無くなりコントロール不能なほど自己を明け渡しているように見えます。
私に自己を明け渡して無になっているのに『青木はこうしてるな、自分は今こうだな、廻りの人は今こう思っているな』というのが全部分かっています。クールです、とってもクールな意識状態でいます。激しく酔って浸りきった状態と頭が冴えきっている状態とが共存しています。
青木先生とお弟子さん両方とも。
雑誌『秘伝1999年12月号』より
そうそう。特に激しく動いている人ほどクールです。ちょっとうちの弟子に聞いてみて下さい。(と、ここで弟子の1人を呼ぶ)

(お弟子さんに)
『光と戯れる』をやっていてあなたがウワァーっと動いているときがあるじゃない、光田さんはあのときは恍惚と舞い上がって魂がアッチの世界に行っていて、あの後普通の日常生活には戻れないんじゃないか思っておられるようなんだけど、あの時どんな状態なのか話して下さい。

(お弟子さん)
そうですね、敏感に廻りのことが分かる感じです。分かるというのは目に見えているということではなく、いろんなことを一度に感じられているということです。ただ、直後は逆に意識があまりに解放されているので、直後は普通に話すのは大変かもしれませんね。
ということなんですね、とてもクールなんです。酔ってはない。
新体道の稽古をまじめに続けていれば、そのような身体になっていく。言い換えると、そのような身体を目指して新体道の稽古はあるということでしょうか? 『そういう身体』が、じゃあどういう身体かは私には説明できないんですが。
『そういう』の表現は色々ありますが、『そういう身体』にまずなるということが大切です。そのために徹底的に身体をほぐし、柔らかく鍛えていきます。私達の身体には自己防御本能があって、ちょっと異変があると身を固くして守ろうとするところがあるんですね。しかし武道的にも体育的にも身体を固くしたら技は効かないんです。柔らかいほうが自由に反応して、技はずっと効きます。

身を守るときにはある程度は力を入れて身を固くして守るということがあり得るわけで、その証拠に貝やエビなどの甲殻類は身の廻りの殻で身を守っていますよね。あのように身を固くすることによって守れるものもあります。だけども固くしてしまうと伸びやかさが無くなってしまいます。運動選手でも歌手でも役者でも、本番前は柔軟体操や瞑想やなんかをして力みを捨ててから臨むでしょう?そのほうがノビノビと出来るんですね。だから硬くならないようにするわけです。
骨を取り囲んでいる筋肉を柔らかくする、ということですか?
そうです。筋肉を柔らかくしておきます。でも柔らかいだけではダメなんです。私の腕を触ってみてごらんなさい。柔らかいでしょう?でも必要があれば、こうして力を入れると鋼鉄のように固くもなる。普段はコンニャクやマシュマロのように柔らかいんです。剣武をやっているときにもマシュマロ状態です。重いものを持つと当然筋肉は固くなります。でも慣れてくると重いものも筋肉を柔らかくした状態でふわっと上がるようになります。
重いものはグッと力を入れて筋肉を固くしないと持ち上がらないと思ってきたので、筋肉が柔らかいままに力が発揮できるというのがいまいちピンとこないです。
昔、横綱の大鵬と戦った相撲取りが、大鵬は柔らかかった、とても身体が柔らかくて押しても押してもどこにも力みがなかったというんですよ。いくら押しても自分が勝つ気がしなかった、ふわっとしている間に負けてしまうと。大鵬は稀にみる大名人ですよ。全然力まない、柔らかい身体をしていた。身体は思いっきり鍛えなければいけないけれど、鍛えると同時に柔らかくするんですよ。しかも柔軟体操で身体を柔らかくすると同時に、気持ちを本当に柔和にしないと筋肉はほぐれません。すごーく柔らかくしなければいけないんです。
青木先生は肩こり知らずですか?
こんな歳(*78歳/2014年10月現在)になっても、肩がこった経験はほとんど無いです。ここを触ってごらんなさい。
(腕の筋肉を触りながら)ヒエ~!柔らかい~。本当にマシュマロです、これは。とても空手を極めた方の腕とは思えません。このマシュマロ筋肉は何なんですか~!私のこの細腕のほうが固いですよ。
いま指圧をしてもらっている先生は70代のものすごく上手い先生なんだけど、自分の指圧人生で私ほど柔らかい身体に触ったことがないと言っておられます。だから横たわっていて背中や脚やふくらはぎなどを踏まれても揉まれても痛くないのです。
お腹も触らせてもらっていいですか?
お腹も柔らかいですよ。でも力を入れたとたんにカチカチになります。力を抜くと全身フニャフニャです。私の身体は赤ちゃんの身体のようですよ。私が理想としているのはマシュマロ筋肉で本当に柔らかい状態で動けることなんですよ。
青木先生の10代からの稽古や修行の様子を本や雑誌で拝見すると、肉体と精神の極限までの稽古をされてますよね。何時間もの厳しい稽古を極めていながら、同時に身体がこのマシュマロの柔らかさというのは想像できないですよね。
60年も武道をやり続けてきて鋼鉄のような身体になったと皆さんは思うでしょうが、とんでもない、正反対です。何十年間も柔らかい身体を目指してきましたからね。ヘビはクニャクニャしていて柔らかいカラダをしています。大きなニシキヘビは猛獣に巻きついて絞め殺したりしますよね。私も東南アジアへ行った時、ニシキヘビを身体に巻きつけたことがあるんですが、もうカチンカチン、鋼鉄のように固いです。ほどこうと思いましたが、1ミリたりとも動かない。そのくせ普段はグニャグニャに動くでしょう。あんな身体です。マシュマロと鋼鉄の両方を使い分けているわけです。

ついでながら言い足しますと、武道ではよく下腹に力を入れろ!と言います。あれは絶対にダメです。下腹に力を入れて相手を油断なく見据えるのが良い、などというのは国民的迷信です。そんなことをしているから、武道経験者みんな、一時流行ったK1で簡単にやられてしまったのです。

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